9 月 3 日、燃料油の支給単価は 1L あたり 32.5 円から 26.2 円へ、1 週で 6.3 円縮みました。8 月の時点でこの欄には「縮小した単価の分がほぼそのまま店頭に出る」と書いています。ガソナビは 9 月 3 日を挟んで前後の掲示価格を追えた店を 3,255 件持っていました。そのうち価格を変えた店は 549 件、残りの 2,706 件(83%)は 1 円も動かしていません。
6.3 円の縮小に、店頭は 0.27 円で応えた
内訳はこうです。値下げが 342 店、値上げが 207 店。平均すると −0.27 円、中央値は 0 円。値上げした店より値下げした店の方が多い、というのが 6.3 円の補助縮小に対する現場の反応でした(ガソナビ集計、2026年8月27日〜9月7日、レギュラー・現金一般価格)。
見立てを外したのは、単価が縮んだ理由を取り違えていたからです。8 月の記事は「補助が縮む=支えが外れる」という読み方をしていました。実際には順序が逆で、卸価格が下がったから埋めるべき差が小さくなり、単価が自動的に縮んだ。制度が基準価格 170 円と実勢卸の差を埋める変動型である以上、単価の増減は原因ではなく結果です。補助前の価格が下がった週に補助が減っても、店頭から見れば差し引きゼロになります。
補助単価が店頭に効くのは、卸が動いていないのに単価だけが政策判断で動いたとき だけです。9 月 3 日はその条件を満たしていませんでした。
8 月に並べた 3 つの筋書きのうち、起きたのは一番退屈なもの
前月のこの欄では 9 月を 169〜170 円・174〜176 円・178〜180 円の 3 通りで見ていました。結果は一番上、つまり据え置きです。
分岐点になったのは 8 月 25 日でした。共同通信が 7 月に報じた「基準価格を 170 円から 175 円へ 9 月に見直す案」は採用されず、高市首相は中東情勢等対応予備費を使って全国平均を 170 円程度に抑える措置を 9 月以降も続けると表明します。9 月 1 日の閣議決定では予備費から 6,136 億円 が燃料油の基金へ積み増されました。基準価格を上げて 5 円分を家計に移すか、財源を足して 170 円を守るか、という選択で後者が取られたわけです。
相場の側は、その間かなり動いています。
| 週 | ドバイ原油 | USD/JPY | レギュラー全国平均 |
|---|---|---|---|
| 7/27 週 | 96.78 ドル | 163.82 円 | 170.1 円 |
| 8/10 週 | 83.55 ドル | 158.34 円 | 170.1 円 |
| 8/24 週 | 94.39 ドル | 158.70 円 | 169.9 円 |
| 9/7 週 | 96.28 ドル | 156.25 円 | 170.0 円 |
原油と為替は forecast モデルの取得値、全国平均は資源エネルギー庁の給油所小売価格調査による公表値です。原油は 6 週間で 13 ドル下げてから 13 ドル戻し、円は 163 円台から 156 円台へ 7 円以上動きました。それでも全国平均の振れ幅は 0.2 円 です。7 月から数えても 169.9 円・170.1 円・170.0 円で、3 ヶ月にわたって小数第 1 位しか動いていません。
10 月の分岐は原油ではなく調整単価にある
補助単価は、毎週見直される変動分と、月ごとに固定される調整単価の合計で決まります。9 月分の調整単価は 2.8 円で、10 月分は 10 月初旬に改定される見通しです。ここが焦点になるのは、変動分が卸価格に機械的に連動するのに対し、調整単価は政策の裁量が入る部分だからです。卸が同じでも調整単価が縮めば、補助の総額はその分だけ減ります。
つまり 10 月に注意して見るべきなのは、ドバイ原油の水準でも為替でもなく、10 月初旬に出る調整単価の改定幅です。9 月 3 日と違って、これは卸の動きと無関係に単価だけが動くケースにあたります。前節の条件を満たすので、縮小分は店頭に出てくる可能性が高い。逆に据え置きなら、原油が 100 ドルを回復しても全国平均は 170 円前後に留まるはずです。
財源の側は 6,136 億円の積み増しで当面の心配が薄れました。ただし基金の消耗速度は単価に完全連動するため、8 月のように 30 円台が続けば減りは速く、7 月上旬のように 2.8 円/L まで縮む週が続けば止まります。残高から出口時期を割り算で出せる性質のものではありません。制度そのものの代替案として議論されるトリガー条項との違いは トリガー条項の解説 に、単価の週次の推移は 補助単価 32.5 円の記事 にまとめています。
平均が凍っている月に残っている 14 円
全国平均が 3 ヶ月動かないと、価格を気にする意味がなくなったように見えます。実際には、平均が動かないぶん残った差は店ごとの差だけになり、その差は縮んでいません。
ガソナビ集計(2026年9月7日時点・レギュラー現金一般価格・高速 SA/PA を除く 40 都道府県 7,860 店)では、安い方から 1 割の水準と高い方から 1 割の水準の差は 14.0 円 ありました。自分の県の中央値より 5 円以上安い店は全体の 15.4% です。6〜7 店に 1 店はこの水準にあるので、探して見つからない密度ではありません。
都道府県どうしの差も残っています。同日時点で最安は埼玉県の 162.3 円、最高は長崎県の 178.7 円で、開きは 16.4 円。9 月 3 日の 6.3 円が店頭に届かなかったことを考えると、制度の動きを追うより県内で店を選び直す方が確実に効きます。自分の県の相場は 都道府県別価格ページ で日次更新しています。原油の動きが店頭に届くまでのタイムラグそのものについては 原油とガソリンのタイムラグ記事 で扱っています。
よくある質問
Q. 9 月 3 日からのガソリン補助単価はいくらですか?
1L あたり 26.2 円です。前週の 32.5 円から 6.3 円の縮小で、3 週ぶりに幅が縮みました。単価は資源エネルギー庁が毎週水曜に公表し、翌日の出荷分から適用されます。縮小したのは卸価格そのものが下がったためで、店頭価格の引き上げを意図したものではありません。
Q. 補助が 6.3 円縮んだのに、なぜガソリンは値上がりしなかったのですか?
現行制度が「1L あたり◯円引き」の定額方式ではなく、基準価格 170 円と実勢卸価格の差を埋める変動型だからです。卸が下がれば埋めるべき差も小さくなるので、単価は自動的に縮みます。店頭から見れば補助前の価格が下がったぶんを補助が減っただけで、差し引きは変わりません。ガソナビが 9 月 3 日を挟んで価格を追えた 3,255 店のうち、83% は 1 円も動かしていませんでした。
Q. 9 月に基準価格が 175 円へ引き上げられる話はどうなりましたか?
見送られました。政府は 9 月 1 日の閣議決定で予備費から 6,136 億円を燃料油の基金へ積み増し、赤沢経済産業大臣は全国平均をリッター 170 円程度に抑える方針を続けると述べています。基準価格を上げて負担を店頭に移すのではなく、財源を足して 170 円を維持する形が選ばれました。
Q. 10 月にガソリンは値上がりしますか?
焦点は原油ではなく調整単価です。補助単価は毎週見直される変動分と、月ごとに固定される調整単価の合計で決まります。10 月分の調整単価は 10 月初旬に改定される見通しで、ここが縮めば変動分が同じでも補助の総額は減ります。ドバイ原油が 96 ドル台に戻している一方で円高が進んでいるため、卸価格の側は上下どちらにも決め打ちしにくい状況です。
Q. 全国平均が 170 円で止まっている間、給油代を下げる余地はありますか?
あります。ガソナビ集計(2026年9月7日時点・レギュラー現金一般価格・高速 SA/PA を除く 40 都道府県 7,860 店)では、安い方から 1 割と高い方から 1 割の価格差は 14.0 円ありました。自分の県の中央値より 5 円以上安い店は全体の 15.4% です。全国平均が動かない月ほど、残っている差はこの店ごとの差だけになります。