7 月 9 日週のガソリン補助単価は 2.8 円/L でした。8 月 27 日から適用されている単価は 32.5 円/L です。7 週間で 11 倍以上。同じ期間に店頭のレギュラー全国平均が動いた幅は、ガソナビ集計(2026年8月31日時点・レギュラー)で 7 月 21 日の 170.0 円から 8 月 31 日の 169.8 円へ、0.2 円 でした。私たちが給油所で見ている 170 円という数字は、もう相場が決めた値段ではありません。
175 円案は消え、財源を足す側が選ばれた
8 月までの争点は、基準価格 170 円を 175 円へ引き上げるかどうかでした。7 月下旬に報じられたこの案は、夏の需要期を過ぎたところで補助が効き始める水準を 5 円分だけ切り上げ、財源の消耗を緩めるものです。ガソナビでも 8 月の見通し記事 で、169 円・175 円・180 円という三つの分岐として扱っていました。
決着したのは 8 月 25 日です。高市首相は「中東情勢等対応予備費を活用してガソリン価格を引き続き全国平均リッター 170 円程度に抑制していく」と表明し、赤沢経産相に必要な基金規模の確保を財務相と協議するよう指示しました。基準価格は 170 円のまま据え置き、不足する分は令和 8 年度補正予算で新設された中東情勢等対応予備費(2 兆 5,000 億円)から補う、という組み立てです。
値段を切り上げて負担を利用者に返すのではなく、財政で吸収し続ける方が選ばれた、と読むのが正確です。首相は同時に「支援単価や措置の出口を含めて柔軟に検討していく」とも述べており、出口の議論そのものが消えたわけではありません。
32.5 円という単価はどこから出てきたか
支給単価は毎週、翌週の想定小売価格から基準価格 170.0 円を差し引いて算定されます。7 月 2 日からは、この変動分に月次で固定される「調整単価」を上乗せする二階建てになりました。8 月 27 日〜9 月 2 日週の 32.5 円は、変動分 26.5 円に 8 月分の調整単価 6.0 円を足した数字です。
| 適用週 | 支給単価 |
|---|---|
| 7/9〜7/15 | 2.8 円/L |
| 7/16〜7/22 | 7.5 円/L |
| 7/23〜7/29 | 16.9 円/L |
| 7/30〜8/5 | 28.2 円/L |
| 8/6〜8/12 | 19.0 円/L |
| 8/13〜8/19 | 17.3 円/L |
| 8/20〜8/26 | 26.0 円/L |
| 8/27〜9/2 | 32.5 円/L |
裏側で動いていたのは原油です。ガソナビの forecast モデルが取得したドバイ原油は、8 月 10 日週の 83.55 ドルから 8 月 24 日週には 94.39 ドルまで、2 週間で 10.8 ドル上げています。為替は同じ期間 158〜160 円台でほとんど動いていません。円安が悪さをしたわけではなく、原油単体の上昇分をそっくり補助単価が吸い上げた形です。原油から店頭までのタイムラグの話は 原油とガソリンのタイムラグ記事 にまとめています。
なお 32.5 円は今回の措置で最も高い単価ではありません。5 月 14〜20 日週には 42.6 円/L まで拡大しており、そこから 7 月上旬の 2.8 円まで一度は縮んでいます。制度は今年に入って、この振れ幅を 2 往復しています。
6 月末に尽きるはずだった基金が、まだ残っている
5 月末の時点では、この基金は 6 月中に枯渇すると見られていました。野村総合研究所の木内登英氏が示した標準シナリオの枯渇時期は 6 月 30 日で、ガソナビも 5 月 28 日の記事 でその試算を紹介しています。
実際には尽きませんでした。理由は単純で、7 月上旬に単価が 2.8 円/L まで縮んだ数週間があったからです。原油が落ち着いた凪の期間、制度はほとんど支出せずに済み、その分だけ寿命が延びました。日本経済新聞によれば 7 月末時点の基金残高は約 2,100 億円、前月末比で約 1,700 億円の減少です。
ところが 8 月の単価は 17.3〜32.5 円のレンジに戻りました。9 月に支払われる 8 月分の支出は 7 月分を大きく上回ります。8 月 25 日の予備費活用の指示は、この計算が合わなくなる前に打たれた手だと見るのが自然です。逆に言えば、残高を単価で割って「あと何ヶ月」と計算しても意味がありません。分母のほうが毎週動くからです。
出口は「制度の終了」ではなく単価の縮小として来る
利用者にとって効いてくるのは、制度が終わる日付ではなく、単価が縮む速度です。補助が 32.5 円から 10 円台まで戻れば、その差の 15〜20 円が数週間かけて店頭に出てきます。ただし単価が縮むのは卸価格そのものが下がったときなので、原油が落ち着いた局面での実際の上昇幅は、理屈で出る数字より小さくなります。両方が同時に動く前提を忘れると、必要以上に身構えることになります。
直近の見通しは静かです。ガソナビの forecast モデルによる 9 月 7 日週の予測は前週比 0.0 円の横ばい。次の支給単価は 9 月 2 日 14 時に公表され、9 月 3 日出荷分から適用されます。補助単価が動いてから店頭に届くまでには数日から 1 週間のずれがあるため、今週給油する分にはまだ 32.5 円の単価が乗っています。
埼玉 162.7 円と長崎 178.6 円は、補助では埋まらない
補助単価は元売りに一律で支給されます。全国どこで給油しても同じ 32.5 円が卸価格に効いている一方、そこから先の地域差には制度は関与しません。
ガソナビ集計(2026年8月31日時点・レギュラー)で最も安いのは埼玉県と愛知県の 162.7 円、次いで宮城県 163.4 円、千葉県 165.3 円。最も高いのは長崎県 178.6 円、鹿児島県と沖縄県が 177.5 円、山形県 176.1 円です。最安と最高の差は 15.9 円/L、50L 入れれば 1 回で約 795 円になります。この構造は製油所からの距離と競争密度で決まるため、補助単価が 2.8 円でも 32.5 円でもほとんど変わりません。
制度がどちらに転んでも、この 15.9 円は自分で取りに行くしかない部分です。自分の県の実勢価格は 都道府県別価格ページ で日次更新しています。
データの出典: 支給単価・基準価格・調整単価は資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」の公表値。全国平均・都道府県別平均はガソナビ集計(資源エネルギー庁「給油所小売価格調査」を基準としたガソナビの日次推計)。ドバイ原油・為替はガソナビ forecast モデルの取得値。基金残高は日本経済新聞の報道、首相表明の内容は 2026 年 8 月 25 日の会見報道によります。
よくある質問
Q. 8 月 27 日からのガソリン補助単価はいくらですか?
1L あたり 32.5 円です。内訳は毎週見直される変動分 26.5 円と、8 月分として月次で固定されている調整単価 6.0 円。7 月 9〜15 日週の 2.8 円/L から 7 週間で 11 倍以上に膨らみました。次の単価は 9 月 2 日 14 時に公表され、9 月 3 日出荷分から適用されます。
Q. 基準価格が 175 円に引き上げられる話はどうなりましたか?
事実上見送られました。高市首相は 8 月 25 日、中東情勢等対応予備費を活用して全国平均をリッター 170 円程度に抑える措置を 9 月以降も続けると表明し、赤沢経産相に必要な基金規模の確保を財務相と協議するよう指示しています。基準価格は 170 円のまま据え置かれ、不足分は財源の積み増しで埋める形になりました。
Q. 補助金の予算はいつ尽きますか?
断定できる時期はありません。日本経済新聞によれば 7 月末時点の基金残高は約 2,100 億円で、前月末から約 1,700 億円減っています。ただし残高の減り方は補助単価に完全に連動するため、7 月上旬のように単価が 2.8 円/L まで縮む週が続けば消耗は止まり、8 月のように 30 円台が続けば一気に減ります。政府は令和 8 年度補正予算で新設された中東情勢等対応予備費(2 兆 5,000 億円)からの追加投入を決めており、単純な残高割り算では出口時期は読めません。
Q. 補助金が縮小したら、ガソリンは何円上がりますか?
縮小した単価の分がほぼそのまま店頭に出ます。制度は基準価格 170 円と実勢卸価格の差を埋める設計なので、単価 32.5 円が仮に 10 円台まで戻れば、その差の 15〜20 円が数週間かけて店頭価格に現れる計算です。ただし単価が縮むのは卸価格そのものが下がったときなので、原油が落ち着いた局面では上昇幅は理屈ほど大きくなりません。
Q. 全国平均が 170 円で固定されているなら、給油代は下げられませんか?
下げられます。補助金は元売りに一律で支給されるため、地域差はそのまま残るからです。ガソナビ集計(2026年8月31日時点・レギュラー)では最安の埼玉県・愛知県が 162.7 円、最高の長崎県が 178.6 円で 15.9 円の開きがあります。50L 入れれば 1 回で約 795 円の差です。