ドバイ原油はこの 2 週間で 12 ドル上がりました。ガソナビの forecast モデルが取得した値で、7 月 13 日週の 76 ドルから 7 月 20 日週は 88 ドル前後へ。米イランの攻撃応酬という地政学ショックが引き金です。ふつうなら店頭価格を押し上げる動きですが、ガソナビ集計(2026 年 7 月 21 日時点)のレギュラー全国平均は 170.5 円/L。7 月前半とほとんど変わりません。原油が跳ねても店頭が動かない――この一見おかしな状態を作っているのが、補助金の自動調整です。
原油が跳ねた引き金
7 月前半、ドバイ原油は 76 ドルまで下がっていました。6 月に走った中東の地政学プレミアムがはがれ、停戦とホルムズ海峡の通航再開で落ち着いていたためです。ところが 7 月後半、米イランの攻撃応酬が伝わると原油は大幅高に転じ、forecast モデルの取得値は 88 ドル前後まで戻りました。為替も 162 円台の円安で、円換算の調達コストはさらに押し上げられています。
原油と為替の両方が上を向いた――本来なら、これは店頭価格の明確な上昇シグナルです。
補助金が 9 週ぶりに増えた
ところが同じ週、燃料油価格激変緩和補助金の支給単価が逆に動きました。7 月 9〜15 日週に 2.8 円/L まで縮んでいた補助単価は、16〜22 日週に 7.5 円/L へ拡大しています。9 週ぶりの増額で、前週から +4.7 円の戻しです。
これは政策判断で増やしたわけではありません。補助単価は 170 円の基準価格と実勢卸価格の差で毎週自動算定される連動方式で、原油急騰で卸価格が上がったぶん、差を埋める補助が機械的に膨らんだ結果です。制度が原油ショックの緩衝材として設計どおりに働いた、と読むのが正確です。補助金の週次の増減の仕組みは 補助金の現状記事 で追っています。
だから 170 円で止まっている
原油 +12 ドル・円安という上振れ圧力を、補助単価 +4.7 円の拡大がほぼ相殺しました。その結果が、店頭の横ばいです。
| 指標 | 7 月前半 | 7 月後半 |
|---|---|---|
| ドバイ原油(forecast 取得値) | 約 76 ドル | 約 88 ドル |
| 補助単価 | 2.8 円/L(7/9-15 週) | 7.5 円/L(7/16-22 週) |
| レギュラー全国平均 | 169.9 円(METI 7/13 公表) | 170.5 円(ガソナビ集計 7/21) |
資源エネルギー庁の給油所小売価格調査でも、7 月 13 日時点の全国平均は 169.9 円で 2 週ぶりに値上がりが止まっています。forecast モデルの 7 月 27 日週の見通しも 前週比 0.0 円の横ばい。上振れ材料と補助拡大が拮抗し、方向感が消えた状態です。なお、経産省の全国平均(169.9 円)とガソナビ集計(170.5 円)は母集団が異なるため、ここでは別々の水準として扱っています。
この均衡は 8 月まで続くのか
見ておくべきは、緩衝材の限界です。補助金は原油上昇を打ち消す方向に働きますが、原油がさらに一段上振れして補助の拡大が追いつかなくなれば、超過分は店頭に出ます。逆に中東情勢が再び沈静化すれば、7 月上旬のように補助単価は数週間でまた縮小し、卸価格の低下とともに店頭も落ち着きます。
7 月に店頭でじわり効いてくるのは、実は 5〜6 月の原油の動きの遅れた反映です。原油から店頭までのタイムラグは 1〜2 ヶ月あり、7 月後半の原油急騰が店頭に本格的に届くとしたら 8〜9 月です(詳しくは 原油とガソリンのタイムラグ記事)。お盆の遠出需要が重なる時期でもあり、8 月は補助金と原油の綱引きがどちらに振れるかが焦点になります。7 月の月次見通し全体は 7 月のガソリン価格見通し にまとめています。
高い県と安い県で 16 円
原油がどう動こうと、店頭価格の地域差はそのまま残ります。ガソナビ集計(2026年7月21日時点・レギュラー)で、最安と最高はこうなっています。
最安は埼玉県と愛知県がともに 163.3 円、次いで宮城県 163.4 円。最高は長崎県 179.1 円、沖縄県 178.3 円、鹿児島県 178.2 円。最安の埼玉県と最高の長崎県では 15.8 円/L の開きがあり、50L 入れれば 1 回で約 790 円違います。九州・沖縄が高く、中京・南関東・南東北が安いという構造は、製油所からの距離と競争密度で決まり、原油相場が動いても月をまたいでほぼ変わりません。
お盆に長距離を走るなら、全国平均ではなく沿道の実勢価格が効きます。出発ルート上の最安スタンドは お盆の給油ガイド と合わせてアプリで確認してください。自分の県の相場は 都道府県別価格ページ で日次更新しています。
よくある質問
Q. 原油が急騰したのに、なぜガソリンは値上がりしないのですか?
燃料油価格激変緩和補助金が原油の動きに連動して自動で増減する仕組みだからです。ドバイ原油が 7 月後半に 76 ドルから 88 ドル前後へ急騰した一方、補助単価は 7 月 9〜15 日週の 2.8 円/L から 16〜22 日週は 7.5 円/L へ 9 週ぶりに拡大し、卸価格の上昇分を打ち消しました。結果として店頭のレギュラー全国平均は 170 円台で足踏みしています。原油から店頭への反映には 1〜2 ヶ月のタイムラグもあります。
Q. 補助金はまた縮小しますか?
補助単価は 170 円の基準価格と実勢卸価格の差で毎週見直される連動方式です。原油と円相場が落ち着いて卸価格が下がれば、補助単価は再び縮小します。7 月上旬は 2.8 円/L まで縮んでいたので、この 7.5 円/L への拡大はあくまで原油急騰への一時的な反応で、恒久的な増額ではありません。中東情勢が沈静化すれば数週間でまた縮む可能性があります。
Q. この先、お盆にかけてガソリンは上がりますか?
forecast モデルの 7 月 27 日週の見通しは前週比 0.0 円の横ばいです。補助金の緩衝が効いている限り店頭は 170 円前後で安定しますが、原油がさらに上振れして補助の拡大が追いつかなくなれば、お盆の遠出需要と重なって上昇に転じるリスクがあります。帰省前の給油は 7 月中の平日に済ませておくのが安全です。
Q. 全国平均が同じでも、地域で価格は違いますか?
大きく違います。ガソナビ集計(2026 年 7 月 21 日時点)のレギュラーでは、最安の埼玉県 163.3 円と最高の長崎県 179.1 円で 15.8 円/L の差があります。50L 給油なら 1 回で約 790 円の差です。全国平均より自分の走るエリアの実勢価格の方が節約効果は大きいので、アプリで沿道の最安値を確認してください。